以前より気になって気になってしようがなかったモデルがこれ。これまで入手するチャンスはあったものの、良い状態の個体に巡り合えませんでした。今回、抜群のコンディションのものを入手できたことは嬉しい限りです。この時計は、第二次世界大戦でアメリカ陸軍航空隊が使用したボムタイマーです。もともと腕時計用ではなく、1934年に「Fairchild Aerial Camera Corporation 」のガンカメラ、CG-16に組み込むために開発されたものです。機関銃型のカメラにこの時計を組み込むことによって、フィルム内に時計を写し込みことができました。このモデルの最大の特徴としては、外部規制のハック(秒針規制)機能が搭載されていること。搭載されているキャリバー982にはハック機能はなく、時計の裏側に飛び出たスイッチを押すことにより、テンプを止めることができます。このスイッチは板バネにより、押している間だけテンプを止める機構になっています。第二次世界大戦では、爆弾を投下してから爆発するまでの時間を計測したとされています。もう一つの特徴は、秒針がダブルハンドになっていること。たとえば、0秒で秒針を止めて、計測する際に、通常だと最大60秒待たなければならないところ、半分の最大30秒でスタート位置に秒針が来るということです。通常、腕時計としては使用できませんが、ビスとスチールの板により革ベルトを挟み込みことで、使用できるようになります。文字盤が90度回転しているところも、腕時計としては面白いと言えます。文字盤は気になるような傷や汚れはなく、大変綺麗な状態です。ケースもしっかりとメッキが残っていて、風合いも抜群です。尾錠は40年代に米軍に支給されたコットンベルトに付いていたもの(未使用品)を装着。こちらも希少です。ムーブメントはとても綺麗で、精度も出ています。とにかく、レアで面白いだけでなく、非常にカッコイイ時計です。分解掃除後のお渡し。