ボーア戦争の時代からイギリス連邦軍のひとつとして行動してきたカナダ軍は、イギリス軍のスペックに基づいた時計を軍に支給しています。このモデルは、カナダ軍が制式採用した最初のモデルで、かなりのレアモデルです。1960年代になると、カナダ軍の方で文字盤を書き換えていますので、オリジナルのまま残っているものはかなり少ないと思われます。イギリス軍のスペックといいつつ、アメリカ軍のデザインなのですが、ここにはちょっと複雑な事情があります。実はこの時計、アメリカ軍のタイプA-11の仕様で製作されたものです。タイプA-11は、アメリカの陸、海軍がミルスペックを作成したのですが、イギリスの航空委員会は米軍のミルスペック開発段階から会議に出席していたました。そのため、タイプA-11は英米共同開発ということになります。イギリス軍ではマーク8と呼んでいます。これをカナダ軍仕様であるホワイトダイアルで製作した訳です。アメリカ軍とイギリス軍に同じデザインのモデルは存在しません。裏蓋の「R.C.A.F.」とは「Royal Canadian Air Force」の略です。また、イギリスの官給品を示すブロードアローと空軍のコードである「6B/150」のマーキングが見られます。